数戸が肩を寄せ合うように集落を形成する山間の場所に、湯抜きのある浴舎が佇む。年月を重ねたと思われる共同浴場の姿に不思議な安堵感を覚える。車は歩いて1分も要しない地区の集会所の前に停めることができる。
アルミ製の扉を開けると脱衣所が現れる。改修されて久しい内部は整理整頓が行き届いて
いる。壁には料金箱、100円玉を3枚入れる。木製の棚と長椅子が置かれた脱衣所は浴室と仕切られている。ガラス越しに見える浴室には目に痛いほどの太陽光が差し込んでいる。
浴室には浴槽が一つ、洗い場はない。浴槽から湯を汲みあげて体を洗う。浴槽を満たす湯は冷めた体に程よい温度だ。
壁から突き出た鉄パイプ製の湯口は透明の湯を絶えず注ぐ。コップが置かれている。飲めるのだ。ほんのり玉子味を感じる。臭いはほとんど感じない。
浴槽の底には湯の花が堆積している。うっすら鶯色を帯びている。湯の中で手を動かすと湯の花は一斉に舞い、透明だった湯を白く見せる。身を沈め一人っきりで過ごす。なんと贅沢な時間だろう。
料金を支払わない人がいるらしく、料金の支払いを求める注意書きが掲示されている。残念で仕方がない。
改修される前から通いはじめて15年ほどの年月が過ぎた。地域の方々によって維持、管理されている施設をよそ者にも開放していただていることに改めて感謝。
この日の涌蓋山は雪をかぶっていた。
12月、すっかり冬の景色だった。
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山川温泉共同浴場
阿蘇郡小国町北里字山川
単純硫化水素泉
泉温不明
シャンプー類なし ドライヤーなし
内湯
300円(子供150円)
~21:00
2017/12/13