国道212号杖立トンネルが完成しバイパスが竣工する1993年2月まで、国道は杖立温泉の右岸側を通っていた。今も残るこの道から公共の駐車場へ行くことができる。駐車場を散策すると立ち寄り湯を誘う宿の看板を見つけた。木造3階建ての宿だ。
玄関を入り声をかける。右手の部屋からで来られた女性の方に立ち寄り湯をお願いする。浴場は左手奥、暖簾が下がっていた。脱衣所は小部屋のような空間で、至ってシンプルな印象を受ける。何もないということではなく必要なものが物静かに揃っているのだ。
扉を開けると浴場だ。迎えられた空間には屋根がある。浴室にだ。階段を数段下りると浴槽が待ち受ける。寝湯を備えた浴槽だ。木でこしらえた湯口からの「導湯路」からは透明無色の湯が注がれている。手にとることができることから、湯は適温に調整されているようだ。湯にこれといった臭いはない。口に含むと極弱い塩味を覚える。
凝った造りの内湯から露天岩風呂に向かう。露天は岩で組み上げられているようだ。湯口からは湯気を立てながら温泉が供給されている。狭隘な空間を活用した露天風呂からは植栽された木立と板壁の間を縫って杖立川を望むことができる。立ち上がることは必須ながら、風景を楽しみながらの入浴は露天風呂の必然である。
内湯の一角には蒸風呂の入口が用意されている。小さい扉だ。杖立温泉ならではのサウナだ。もう一つ扉がある。超音波風呂の表示ある。扉の先にはもう一つ浴室が用意されていた。高い天井に支えられた空間は杖立川に望み一面ガラスが用いられ明るい。上部の透明ガラス窓からは杖立の風景を望むことができる。穏やかな風景だ。浴槽に満たされる湯は屋根のある内湯と同様、無色透明で無臭だ。
500円で内湯二つ、露天、蒸風呂と4つの湯が楽しめる。限られた空間で杖立の湯を楽しんでもらおうとする宿の工夫と志が伝わるようだ。
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杖立温泉 旅館泉屋
阿蘇郡小国町下城4179
0967(48)0021 HP
塩化物泉
89.5℃
シャンプー類あり ドライヤーあり
内湯 露天
500円
8:00~21:00
2017/12/13