湯出川と県道117号は、互いをたたえあうように山深くへ人を誘う。惹きつけられるままに道を進めると、緑の懐に湯の鶴温泉はある。数件の宿とみやげ物店、食堂が狭い道沿いに並ぶ。
湯出川に架けられた専用の小橋の向こうに昼食で賑わう宿がある。慌しく動く宿の人に立ち寄り湯をお願いする。洞窟風呂と展望風呂があり、どちらかに入ることができるとのこと。展望風呂を選んだ。
長い屋内の階段を上りつめると浴場だ。脱衣所には木製の棚が並ぶ。さほど広くはない。貴重品入れも備わるが鍵はない。浴場には中央に浴槽が配置されている。T字型をした浴槽で、一部は浅い。岩を伝って湯が注がれている。やや熱めだ。透明の湯は極僅かに硫黄臭を覚える。口に含むとトロ味を感じる。柔らかく優しい印象だ。
展望風呂と名乗るにふさわしく眺望も良い。屋根はあるが木をあしらった浴槽が戸外にある。板塀と簾が邪魔ではあるが、温泉街を見渡し見下ろすことができる。遠くにはだんだん畑が続き、菜の花が競うようにその色を揺らしている。心あらわれる風景だ。
源泉温度は50℃を超えるため、夏場は加水されるようだ。
□
湯の鶴温泉 あさひ荘
水俣市湯出1559-2
0966(68)0111 HP
単純硫黄温泉
57.2℃
シャンプー類あり ドライヤーあり
内湯 露天
300円
10:00~20:00
2015/3/22