人吉の盛り場や商店が建ち並ぶ一角に、町並みとは不釣合いな風情を漂わせ、新温泉は静かに存在しています。訪れたとき、午後0時50分、午後からの営業時間前でした。
玄関先でしばらく立ち尽くしていると、洗面器を抱えたおばさんがやってきました。「入るの?」「はい!」「じゃ、こちらから(女湯の入口)入りなさい。ここ(番台)にお金を置いて入ればいいよ。」「いいんですか?・・・」ということで午後からの一番風呂です。5分ほどして管理のおばさんが来られました。
広い脱衣所には懐かしい昔ながらの広告絵が掲げられています。脱衣所の風情は何ともいえない安堵感を与えてくれます。浴場へ参ります。
石段を数段降ります。浴場空間も広く、洗い場はかなり広いスペースが確保されています。逆に浴槽は2つありますが小さくて、両方とも2.5m四方のセメント製です。ここで驚いたのは、右手の浴槽は浅く、脛の半分くらいの深さしかないことです。供給されている湯も少々です。しかも温い。いったいこの浴槽、どうやって使うのだろう?寝湯かな?
一方、湯口から勢いよく湯が注がれている左手の浴槽は普通の深さです。湯を眺めていると、薄い褐色だということに気づきます。湯口の湯を手に取ると、鉱物臭、そしてとろみのある味わいです。観察を続けると白い湯の華が舞っていることに気づきます。高い天井とあいまって、湯を友にして過ごすには最高の場所のひとつかもしれません。この温泉に、最初からずっと貸し切りでした。幸運です。
湯上り、管理のおばさんから「温くなかったかい?」とやさしい口調で話しかけられました。気持ちまでポット温まりました。浴舎はかなり古いようで、梁や柱は鉄骨で補強されています。
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新温泉
人吉市紺屋町80-2
アルカリ性単純温泉(緩和性低張性高温泉)
42℃ 掛け流し
300円(小学生以下100円、幼児50円)
8:00~9:00/13:00~21:00
2005/11/3
■再訪2013/10/12
8年の時間が経過していました。久しぶりの新温泉は以前の記憶と変っていませんでした。
時間は止まっていました。
コーヒー色の湯にしばらく目を閉じて満たされました。
可能な限り、原型を保とうとされているように感じられました。