2度目の来訪、1年ぶりです。初めて訪れたとき、場所を探すのに大変苦労しました。たまたまこの温泉を訪れた方と偶然すれ違い、教えていただいて発見することができました。
寺尾野温泉は、地域の方々によって管理・運営されている共同浴場です。ひっそりと佇む館へ行くには、民家(左の写真)の中庭を通り抜け田んぼの畦道を進まなければなりません。駐車場もないので路肩に駐車させていただき、迷惑にならないように気を配ります。
入口を入ると左側が男湯、右側が女湯です。脱衣所と浴室は同じ空間です。浴室はこじんまりとした広さです。
初秋の頃、壊されたらしい料金箱は、きちんと脱衣棚の傍に掛けてあります。100円玉を入れて入浴できます。男女を仕切るのは隙間だらけの板壁のみです。女性の方は勇気が必要ですね。
湯口から供給された湯は一旦小さな桝に落ち、次に1.5m四方の浴槽へ注がれます。更にあふれた湯は、男女にまたがる広い浴槽へ流れ込みます。湯は湯口に近い浴槽であっても温い、冬場にはちょっと辛い温度です。
湯は有臭(弱い硫黄臭)・透明で湯の華をわずかながら見ることができます。浴槽はタイル張り、山川温泉共同浴場と同様に洗い場はなく浴槽の湯をすくって体を洗うことになります。
寺尾野温泉は、設備をどうのこうの言う温泉ではありません。山間の集落にあって、人を自然の一員だと思い出させてくれる温泉です。
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寺尾野温泉 薬師湯
阿蘇郡小国町大字上田字寺尾野
硫化水素泉
湧出量344リットル/分 掛け流し シャンプー石鹸なし
100円(子供50円)
2003/11/24
■再訪 2006/4/9
寺尾野へ足を運ぶのは2年半ぶりです。随分時を空けています。いつもの場所へバイクを停め、入口の家の方に挨拶をして、細い道を下ります。先客はカップル、入れ違いに貸切となりました。
これほど硫化水素臭が強かったかな?などと昔の記憶を呼び起こしながら湯につかります。
静かです。流れ込む湯の音ぐらいしか聞こえてきません。このひと時、ここに来ないとありえないません。地元の方がこつこつと守り続けてこられた寺尾野温泉、マナーを守り、入らせていただいていることへの感謝をせずにいられません。
■再訪 2012/4/8
民家の間をすり抜けて行く道とは異なる道が整備されています。民家の集まりから少し下った辺り、田んぼの間にコンクリートされた道が目に留まります。その位置からすでに浴舎の屋根が見えます。
浴舎も浴室も湯も料金も、何も変わらず迎えていただきました。
■再訪 2012/8/4
緑色を深めた稲が育つ間の道を進むと、記憶と一致する浴舎が見えてきます。人の気配はありません。夏にほどよい湯温の湯に身を沈め、目を閉じます。
日常の不条理が巡った後、この湯に導いていただいたことに感謝です。